昨日8日、千葉県議会6月定例議会が閉会した。毎回、議会最終日は質疑、討論で少数会派の出番となるが、「野党」色を鮮明にした民主会派は今回、森田知事の完全無所属、政治資金問題などでの百条委員会設置発議(市民ネット・社民・無所属、共産の3会派の共同)の趣旨説明、教育委員人事での質疑・討論など活発に行った。
私は日本教育再生機構代表委員の野口芳宏氏(植草学園大学教授)を選任する教育委員人事案件の質疑で登壇した。著作などで明確にしている氏の靖国神社、教育勅語賛美などの見識について、「教育の中立性」「憲法尊重擁護義務」に反するとし任命権者である森田知事に答弁を求めた。森田氏は、「教育行政の中立性」を尊重しつつ教育環境整備を推進すること、憲法を尊重することは「その通り」と答えたが、他の質疑には「総合的に判断し人物本位で選んだ」という同じメモの「棒読み」をただただ繰り返すだけだった。
ともかく質問をしてもその内容を理解する力がない。昨日の質疑でも、後ろから間違って渡されたメモを読んで質問していない項目に答えるハプニングがあった。
教育委員選任にあたり知事部局は県民が期待するような見識のチェックは一切実施していないことが質疑からわかった。
07年度の全国学力テスト結果を分析し、「子ども自身の「努力」や通塾に還元されない学力格差が、厳然と存在する」として行財政支援を提案した県検証改善委員会(委員長・苅谷剛彦東大教授)の報告内容についての見識と、1998年、国連の「子ども権利委員会」が日本の子どもたちは「過度に競争的な教育制度のストレスで子どもたちの発達のゆがみの危険にさらされている」と指摘し、04年にも「指摘された事態は改善されていない」と再び厳しい勧告をしたがその勧告内容についての野口氏の見識を問うたが、前者については「わからない」、後者については答弁なしだった。
以下に私の質疑概要を紹介する。
【参考】野口芳宏氏を県教育委員に任命することについての質疑(7月8日県議会)
(1回目)
市民ネット・社民・無所属の川本幸立です。
議案第44号、教育委員会委員人事につき同意を求めることについて質疑を行います。
私は、去る4月臨時県議会で教育委員会委員人事案件についての討論の中で、次のように述べました。
「教育行政の責任と権限を持つ教育委員の任命は知事の仕事ですが、その最終決定権は議会にあります。首長と議会が競い合って県民に説明責任を果たすという2元代表制の下、知事から提案された委員候補が、千葉県の子どもたちの教育を託すにふさわしい人材かどうか、その見識、力量をしっかりチェックすることが県民から付託された議会の責務であり、議会は県民に対する説明責任を果たさねばなりません。しかし、教育行政の経営者の力量を判断するのに、本日のように提案をして即可決するということは県民から付託された責務を果たしていると言えるのでしょうか。」
こう述べてそして、討論の最後に、委員候補の見識を直接伺い、意見交換して千葉県の教育を託すに相応しいかどうかしっかり議会が判断できる日程、手続きをとることを求めました。
しかし、残念ながら、こうした手続きは今回も果たされませんでした。そうであれば、県民への説明責任を果たすためには任命権者である知事にお尋ねするしかありません。
手続き面からの質疑はすでに行われましたので、私は、委員候補の方が「千葉県の教育を託すにふさわしい見識を持っておられるのかどうか」について、任命権者である知事に、以下質疑させていただきます。
1.委員任命にあたり、知事の教育に対する姿勢と人選は密接な関係があります。
教育基本法第16条に定める「教育行政の中立性」を尊重しつつ教育環境整備を推進することが知事の任務だと考えるがどうか。
2.今回の委員候補者の方について、事前に経歴と「教育委員会委員候補としての考え」というA4一枚の文書が配布されていますが、これだけではその見識を理解することはできません。
そこで4点ほどお伺いします。
1点目に、知事は、なぜこの方が教育委員としてふさわしいと考えるのかお伺いします。
2点目に、知事は、マニフェストで「強く美しく元気な心を育てます」、「心を育てる教育に全力投球!」としている。委員候補の方にこれらの推進役を期待をしているのか
3点目に、憲法第99条に基づき、公務員は憲法を尊重し擁護する義務を負います。委員候補の方が憲法を尊重する姿勢があるのかどうかお伺いします。
4点目に、全国学力テストに関連して伺いますが、
委員候補の方は、全国学力テストについてどのような見解をお持ちなのか、お伺いします。
また、千葉県では、07年度の全国学力テスト結果を分析した県検証改善委員会(委員長・苅谷剛彦東大教授)の報告で、「子ども自身の「努力」や通塾に還元されない学力格差が、厳然と存在する」として行財政支援を提案しましたが、この報告書内容についてどのような見解をお持ちなのか伺います。
以上で1回目の質疑をおわります。任命権者である知事の答弁を求めます。
(2回目)
質問していないことにも答弁いただいたようです。
事前に配布された「教育委員会委員候補としての考え」の中で、委員候補の方が、研究や成果の一端を「いくつかの論文や著書」として発表したと書かれています。
そこで、インターネットでこの方のHPから主張を検索し、また議会図書室を通じて2冊著書を取り寄せて読みました。
驚いたのですが、
過去の戦争と靖国神社について
「小泉総理大臣の靖国神社の参拝発言は実によかったと私は胸のすく思いでいる。靖国神社は、日本の国難にあって一身を奉じて国を守った英霊をまつる社である。これを右よりだとか政教分離に反するなどと言うのは実に本質を誤った言である。教師の間でこの快挙の意義を語り合ってみてはどうだろう」と書かれています。
過去の戦争と靖国神社を賛美し首相参拝をもろ手を挙げて賛成しています。
これは、日本人3百数十万人、アジアで二千万人の命を奪った過去の戦争の深い反省の上にたって定められた憲法に相反するものです。
また、2年前に出版された「縦の教育、横の教育」という本、これは発行が(財)モラロジー研究所ですが、ここでは教育勅語について、
「教育勅語は、天皇を大事にしろなどと言っているのではないのです。教育にはこういう明快さが必要だ」と教育勅語を賛美しています。
教育勅語は、生徒一人一人の命を尊重するのではなく、「天皇のために潔く死ぬことが学校や教師の使命」として戦争へと国民をかりたてました。
さらに「親の言うこと先生の言うことをきちんと聞けば、子どもは必ず立派に育ちます」と書いています。職員によるセクハラ、パワハラ、児童虐待などは眼中になく、国家に無批判に従う、国家にとって都合の良い従順な国民にしたてあげることが教育の目的と確信しているようです。
つまり「自立した個人のしあわせ」ではなく「奴隷のしあわせ」で満足しろというものです。そういう人をつくるのが教育の目的だとしている。
そこで以下知事に伺います。
①こうした主張、見識についてどう思うのか、またこれらを知った上で委員候補としたのか伺う。
②「天皇のために潔く死ぬこと」を国民に求めた教育勅語は、日本国憲法が第13条で「個人の尊重」を最高の価値とし多様性を重視したことと相いれないと考えるがどうか見解を伺う。
2.知事のマニフェストと関連してうかがいます。
知事の「マニフェスト」によれば学級崩壊、家庭内殺人、無差別殺人などの事件が頻発し、それを家庭や学校における道徳教育やしつけ教育が大きな要因としています。
しかし、これは知事独自の勝手な見解です。
少年犯罪については今議会の代表質問で大野博美県議が指摘したとおり粗暴犯、凶悪犯ともピーク時と比較し激減している。
また、こどもの危機は「学校や家庭の努力だけでは解決できない」ものであり、社会的歴史的要因が大きい。
1998年、国連の「子ども権利委員会」から日本の子どもたちは「過度に競争的な教育制度のストレスで子どもたちの発達のゆがみの危険にさらされている」と指摘され、04年にも「指摘された事態は改善されていない」と再び厳しい勧告を受けている。
まず、おちこぼれ前提の競争教育によるストレスと成果主義こそ改善すべきものと考えるが、委員候補の見識はどうか伺う。
(3回目)
3回目最後の質疑を行います。
委員候補の見識をまともに検討することなく議会に提案していることが明らかになった。任命権者である知事の見識にも疑問を持つ。
そもそも憲法は過去の戦争を深く反省し2度と繰り返さないという決意のもと、「個人の尊重のための立憲主義」という世界の近代憲法の流れを引き継いだもので、国民からの政府への命令であり、国民は国家のためにあるのではなく、国家は国民のためにあるという考えが根底にあります。
一方、教育勅語、靖国神社は過去の戦争を賛美し、国民の上に国家をおくものであり、憲法の基本原則とまったく相容れるものではなくその対極にあるものです。
そこで伺う。
1.教育勅語を賛美し、靖国神社を賛美することは憲法を遵守し擁護することとは正反対であり、明らかに委員候補の見識は憲法に合致せず、憲法99条に反するものであり、県教育の経営的立場に立つ者としては相応しくないと考えるが如何か。
2.今回の委員候補の方は(財)モラロジー研究所教育者講師であり、そこから本も出され、毎年各地で開かれる研究所主催の「教育者研究集会」だけでなく研修会にも講師として参加しこの財団を「中庸且つ穏健、日本人としての誇りを共有する活動を展開している」と賛美している。私は委員候補の考え方はこの研究所の考え方そのものだと考える。
また、今県議会でも話題となった、知事の政策アドバイザーの一人は、この研究所の秘書室の主任であり、さらにこの財団の関連団体からは森田知事の資金管理団体にH17年度、H18年度だけでも多額の講演料が支払われている。
これらを考えると特定の研究所の考えを県教育に押し付けるものであり、これは最初に「守る」と答弁された「教育行政の中立性」に反するのではないかと考えるが如何か。
知事の自らの言葉による率直な答弁を求めまして私の質疑をおわらせていただきます