2010/7/11 日曜日

話題の映画「ザ・コーヴ」を観る

カテゴリー: 活動日記

 先日、民族排外主義者の街宣抗議・予告により映画館の「自主規制」が相次いだ話題の映画「ザ・コーヴ」を渋谷で観た。平日にも関わらず8割程度もの観客の入りだった。

率直な感想を言えば、この映画は、和歌山県の太地町民や漁業関係者ら一方の当事者の声のない「宣伝映画」である。この映画を通じて私も日本の特定の地域でイルカ追い込み漁、イルカ肉の食文化のあることをはじめて知った。映画が「告発」しているのは追い込み漁という「屠殺行為の残虐性」であり、「水銀汚染問題」である。すでに指摘されているように、前者はイルカのみならず他の生物の生命にどう向き合うかに通じる問題であり、後者は人間を含む食物連鎖の頂点にある生物の汚染の問題である。これらについて映画では深く追求してはいない。

 しかし、見終わって改めて思うのは、「多数の日本人に見せまい」と映画館や支配人の自宅に「街宣」する行為の異様さである。
映画館主が語るように、「作品の正当性を主張して上映するというよりも作品を観れる環境を提供することで作品への賛同や批判を多くの方に共有して貰」う場であり、「上映依頼があり、観たいというお客様がいらっしゃるということ、それ以外にありません」というのが映画館だ。(月刊誌「創」8月号)

 鈴木邦男氏の「でも、どうしても許せない映画ならば、日本人みんなに観てもらって、『こんな酷い映画をやっているぞ、俺たちの主張が正しいことがわかるだろう』と言えばいいんです。その勇気もない、数十人ほどの人たちが『これは反日だ』と決めつけて、一億二千万の日本人に見せない。それはかえって、日本国民をバカにしているということじゃないですか」という発言(同)に同感する。

 映画館で購入した「コーヴ」のパンフレットによると、イルカとクジラは生物学上同じ種類の生き物とされており、一般的には4メートルより大きいものをクジラ、小さいものをイルカとしている、とある。ちょうど手元にある「ビッグイシュー日本版」(6月15日号)は「クジラと日本人~沿岸捕鯨を守りたい」を特集している。

 特集には「IWC(国際捕鯨委員会)の場で、日本は捕鯨調査をやめる代わりに、沿岸捕鯨を認めるよう主張するのが妥当」という米本昌平氏のエッセイとともに、太地町で捕鯨問題に関わってきた北洋司氏の発言が紹介されている。「人間は、ほかの命をいただいて生かされているのだと、命あるものに対する畏怖と感謝の念を持ち続けてきたのです。また、捕鯨は命がけの仕事。命と命のせめぎあいの中で、太地の人々は自然や命というものに、ずっと向き合ってきたのです」「科学的な根拠に基づき、持続可能な方法と制限の中で、私たちは地域で育まれてきた太地の沿岸捕鯨を守っていきたいのです」

 映画「ザ・コーヴ」は作り手の意図に関わらず、多様な問題を私たちに投げかけている。
 一度、太地に行ってみたい、と思う。

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